TOKYOブラジル散歩

MOTで開催中の「ネオ・トロピカリア」にも参加しているヴィック・ムニーズがキュレーションを担当した、ブラジルと日本のアーティスト展が開催中です。

 

今年はブラジルの文化に触れるイヴェントが
数多く開催されました。


でもまだ現在、開催中のイヴェントはたくさんあります。


冬休みやクリスマス・デートなどに
ぜひ足を運んで欲しいイヴェントをご紹介します。


現在、渋谷と本郷にある
トーキョーワンダーサイト(TWS)で
ブラジルのアート展が開催されていますが
この展覧会、
実に生々しく
実に力強く
ビンビンに「ブラジル」が伝わってくる展覧会なのです。

 

常日頃、
<ブラジルならではの創造性>とは何か?
ということを考えている僕に
とても大きなヒントと刺激を与えてくれました。


看板.JPG
トーキョーワンダーサイト本郷で開催されている
「Haptic-触覚」という展示です。
 

この展示は副題が
「ヴィック・ムニーズ キュレーションによるブラジル・日本アーティスト展」
となっています。

 

ヴィック・ムニース(ムニーズ)といえば
現在、MOTで開催中の「ネオ・トロピカリア」
にも作品が展示されているアーティスト。


音楽ファンには
セウ・ジョルジのジャケットを手がけたことでも有名ですね。


seujorge.jpg
セウ・ジョルジ
「クルー」(オーマガトキ)
 

実は、そのヴィックの個展が現在
トーキョー・ワンダーサイト渋谷で開催されているのですが
同時に
ヴィックがキュレイターとなって
ブラジルと日本のアーティストを紹介しているのが
「Haptic-触覚  ヴィック・ムニーズ キュレーションによるブラジル・日本アーティスト展」。

 

 

ヴィックが今回紹介するのは
Efrain Almeida エフライン・アウメイダ(アルメイダ)
Leda Catunda レダ・カトゥンダ
Miki Kubota 窪田美樹
Aiko Miyanaga 宮永愛子
Tomoko Nagai 長井朋子
Erika Verzutti エリカ・ヴェルズッティ
です。

 

ブラジル勢は開催一月前から来日して
日本勢の作家陣ともども、
この展覧会のための作品を
青山にあるTWSのアトリエで作品を制作したのだそうです。

 

作品は3つのフロアに
2組づつ紹介されています。

 

最初のフロアは
窪田美樹さんと
エフライン・アウメイダ(アルメイダ)さん。


窪田さんは
新進作家の登竜門と言われている
「シセイドウ アートエッグ」の第2回に入賞して
今年の1月に資生堂ギャラリーで個展を開催しているそうです。

 

イスやソファーを
解体・再構築した作品には
無機的な物体が
有機的なばかりか官能的にさえ変化している
というように僕には感じられました。

 

窪田美樹 かげとり まとわりつく内側.JPG
窪田美樹    かげとり まとわりつく内側
 

普通に日常の中にあるものを
独自のイマジネーションで
自身のアートとして表現している姿勢や
(僕の勝手な印象ではありますが)
官能的な雰囲気が滲み出ることを恐れずに
作品を通して自身を解放している辺りが
ヴィックの目にも面白く感じたのではないか、と思いました。

 


同じフロアに展示されている
エフライン・アウメイダ(アルメイダ)さんは
セアラー州ボア・ヴィアージェン出身の
木を使った彫刻家。


今年の7月~9月に
豊田市美術館で開催された
「Blooming: ブラジル - 日本 きみのいるところ」
にも出品をしていました。

 

自身の姿を彫った作品には刺青が。

 

日本に来てから感じた日本の印象と
ブラジルのアイテムを
刺青の中で調和させたのだそうです。

 

 

壁中に、蛾が止まっている様子
を模した作品では
たくさんの蛾が彫刻で作られています。


Efrain Almeida Ga.JPG
ちなみに僕は虫が苦手で
とくに蛾も苦手なのですが
エルラインが作る蛾は
どれも可愛らしくて微笑ましいのが印象的です。


 

 

ブラジルのデザインには
「可愛い」というポイントもあると思うのですが
これはブラジル人が持っている
いい意味での無邪気さから来るのではないかとも、思います。

 

 

2つ目のフロアは
宮永愛子さんと
エリカ・ヴェルズッティさん。

 

宮永さんは
「シセイドウ アートエッグ」第3回の入賞者。


昨年は
墨田区で開催されるアサヒ・アート・コラボレーションで
隅田川からとった塩を使った作品を発表していたそうですが
生活の中にあるものをアートにしちゃう感じの表現が得意なのは
この展覧会の参加者全員に通低しているようです。

 

ここでは
ナフタリンを使った造形作品を発表しています。


ナフタリンですから
時間とともに姿を失っていきます。

 

展覧会の終り頃には
形もなくなりかけているかもしれません。
まさに有機的な表現です。

 

ナフタリンで作られた
古い旅行かばんには
サウダーヂがいっぱい詰まっていそうです。

 

今回の展覧会は
制作の課程から
ブラジルと日本のアーティストが
同じアトリエで制作をしているため
互いに影響を与え合っていて
それが作品にも表われているところも
面白いところです。

 


宮永さんは
作った作品に細部までこだわる方なのだそうですが
今回、アトリエから展示会場に
旅行かばんの作品を運んだとき
一部、破損した個所があったのだそうです。


 

宮永さんは
いつもならショックに感じてしまうところ
今回は
共にスタジオをシェアしあった
エリカ・ヴェルズッティさんの
作品に対する臨機応変な自由さに影響を受けて
破損部分に、身近にあった新聞を貼りつけることで
新たな形で作品を完成させたのだそうです。

 


そのエリカ・ヴェルズッティさんは
立体造形を作る作家。


彼女も
MOTで開催中の「ネオ・トロピカリア」にも参加しています。


ここでの彼女の作品は
素材から全て日本で調達したもので作られています。

 

東急ハンズは彼女にとって素材の宝庫だったようで、
フェイクのブロンズはかなりのお気に入りの様子です。

 

Erika Verzutti Maria in Tokyo.JPG
長ネギやアスパラ、ナスなど
やはり普通に日常の中にあるものたちが
まったく異なる新しい形に生まれ変わっています。
 
Erika Verzutti Tokyo Turtle.JPG
なんとなく吉田戦車の描くキャラに通じる感じが...。
 

可愛らしさとグロテスクさを合わせもつ彼女の表現は
互いに相反するかのように思えるけれど実はほとんどの人間が合わせ持っているような感情が
同時に表出している点、
それが表出することを恐れずに解放されている点などが
ブラジルらしいなと思います。

 

 

さて、
3つ目のフロアは、
長井朋子さんと
レダ・カトゥンダさん。

 

レダ・カトゥンダさんは
これまた布記事や写真など身近な素材を使って
既存のデザインや再構築して
まったく異なる世界を作り上げる作家です。

 

Pescador.JPG
“中産階級のユートピア”をテーマにしているという
今回の作品には
アイロニーもたっぷりです。
 

さて。
長井朋子さんはTWS本郷や小山登美夫ギャラリーで
個展も開催している気鋭の絵を描く作家です。

 

彼女を選んだヴィックは本当に鋭いなと思いました。

 

人形や動物など日常の中にあるものと
心の中にあるものを
自由に描いていく彼女は
アトリエに
お気に入りのものたちをごっそり持ち込んで
アトリエを自分の部屋化して制作するのだそうです。

 

彼女の絵の中には
「子供かっ!」と突っ込みたくなるような
動物の姿が登場したりもしますが
“薄っぺらなガーリー感”は皆無です。


むしろ背筋がゾクゾクするような
得体の知れない迫力に溢れています。


この迫力は一体、何なんだろうと考えたのですが
<恐ろしいほどの無邪気さを
顕してしまうことをも恐れない開放感>
からくる強さではないか、と思います。


つまり絵を描くことで
解放されきっている彼女は
制御されていない分、
フィルターがかかっていない分、
その絵の中に
無邪気と邪気を
少女性と成熟した女性性をも
強烈に
同時に
介在させているのではないかと思うのです。

 

これは
エリカ・ヴェルズッティ
エフライン・アウメイダ(アルメイダ)
レダ・カトゥンダ
窪田美樹
宮永愛子
そして
選者ヴィック・ムニースの作品にも共通している感覚であり
僕が<ブラジルの創造性>に
最も強く感じる点です。

 

 

ダメさや弱さと逞しさ、力強さ
セコさとおおらかさなど
彼自身の人間性が
全力で全開になって
人間臭くて面白すぎるパワーが漲った
心底ソウルフルなチン・マイアの歌声も然り。


キレイ事を排して
かんべんしてくれよと思うほどリアルに
希望と絶望をまったく同時に描ききる
フェルナンド・メイレリス(メイレレス)の映画も然り。

同様の迫力、生命力、
ひいては命ある歓びを、感じます。

 

 

アートに限らず
音楽でも映画でも
ブラジルの創造性、表現に興味のある方は必見です。

 

 


「Haptic-触覚  ヴィック・ムニーズ キュレーションによるブラジル・日本アーティスト展」は
来年1月12日(月・祝)まで開催中。

入場無料です。


宮永さんの作品が姿を無くしてしまわないうちに
早めにご覧になることをお薦めします。

 

トーキョーワンダーサイト本郷
http://www.tokyo-ws.org/hongo/index.html

会期 :2008年11月22日(土)~2009年1月12日(月・祝)

休館日 :
月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、年末年始(2008年12月29日~2009年1月5日)

時間 :11:00~19:00 (入館は閉館の30分前まで)

入場料 : 無料

麻生雅人(あそう まさと)

ブラジルに心を奪われたモノ書き。雑文から音楽評論まで。雑誌は「R25」などに執筆。書籍編集、番組構成、CD監修なども。「ブラジル大作戦」(MUSIC AIR)、「Radio Brisa Brasileira」(STARdigio)が放送中。書籍では「サンバ」、「ブラジリアン・ミュージック」(共にシンコー・ミュージック)など。個人blogでもほぼ毎日ブラジル関連情報紹介中(http://brisabrasileira.pokebras.jp/)。写真はアサイーの故郷トメアスーのCAMTAにて。


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